中国はどうやって最大のEVバッテリー生産国となったのか?

中国は今やEVのバッテリー共有国として最大手だ。

2005年においてはたった2つのEVバッテリー工場しかなかった。

今では世界の3/4のリチウムバッテリーを供給している。

中国は2008年の北京オリンピックでEVバスを導入、宣伝し、道を築いた。

非常に戦略的な取り組みで、人も資源もある国ならではということと、政治による統一ができている(よくも悪くも)共産主義の国だからこそだろう。日本などはとても追いつけない。

BBCより、

‘They’re just so much further ahead’: How China won the world’s EV battery race

'They're just so much further ahead': How China won the world's EV battery race
In 2005, China only had two EV battery manufacturers. Twenty years later, it produces more than three-quarters of the wo...

中国が制した「EVバッテリーの覇権」— 世界の3/4を供給するまでの20年戦略

― オリンピックから始まった「国家規模の産業シフト」 ―

2005年、世界に存在したEV(電気自動車)バッテリー工場はわずか2か所だった。
それが今では、世界のリチウムイオンバッテリーの約75%を中国が供給している。
この数字は単なる生産量の話ではなく、産業構造と国家戦略の成果を示している。


🇨🇳 オリンピックで始まった「電動化国家プロジェクト」

中国のEVバッテリー覇権の原点は、2008年の北京オリンピックにある。
このとき、中国政府は「環境配慮型都市」を世界に印象づけるために、
EVバスや電動車両を公的に導入・運用し、そのインフラ開発と宣伝を同時に進めた。

これは単なる演出ではなく、**国家が市場を先導する“実証実験”**だった。
オリンピックの成功を通して、バッテリー、モーター、充電網など、
EVエコシステムの基礎が国家レベルで整備されていったのだ。


🔋 世界の3/4を握る「産業連携とスケールの力」

2025年現在、中国は世界最大のバッテリー供給国である。
主要企業としては、

  • CATL(寧徳時代):世界シェア35%以上
  • BYD:自社車両+供給の二刀流モデル
  • CALB、Gotion High-Tech、EVE Energy などの新興勢力

これらの企業が生産するリチウム電池は、EVだけでなく、再エネ貯蔵やAIデータセンター用電源にも使われている。
つまり、EVバッテリー産業はすでに**「脱・自動車」**の領域に入りつつある。


🧭 なぜ中国だけがここまで進んだのか?

BBCによると、中国がEVバッテリーで世界をリードできた理由は以下の3つに集約される。

  1. 政治的統一と長期戦略
     中国政府は2000年代初頭から「新エネルギー車(NEV)」を国家重点産業と位置づけ、
     中央と地方で補助金・インフラ政策を一体化して進めた。
     “よくも悪くも”政策実行が速いのは、共産主義体制ならではの強みといえる。
  2. 資源調達の早さ
     リチウム・ニッケル・コバルトなど、資源確保を国家レベルで推進
     アフリカや南米で早期に鉱山投資を行い、現在の「資源覇権」を築いた。
  3. 人材と資本の集中投下
     地方都市の大学・研究所・企業を含め、バッテリー技術人材を一極集中育成
     2000年代後半から民間企業への融資・支援が急増し、スタートアップが次々誕生した。

🇯🇵 日本はなぜ追いつけなかったのか?

一方、日本は技術力は高いが、速度で遅れた
かつてトヨタ、パナソニック、日産などが先行していたが、
政策と産業の足並みが揃わず、量産・サプライチェーンの拡大に出遅れた

特に、リチウム資源の調達やコスト競争では、
国家戦略として動いた中国とのスケール差が顕著に表れている。


🌍 EV時代の覇権は「電池の覇権」

EVは「エンジン」から「電池」へのシフトに他ならない。
そして電池の製造・供給・リサイクルまで一貫して掌握する中国は、
EV=中国産業の中核という構造をすでに完成させつつある。

BBCは次のように結論づけている。

“They’re just so much further ahead.”
(彼らは、単にあまりにも先を行っている。)

この一文は、数字以上に現実を物語っている。


🚗 まとめ:産業政策と国家戦略の差

中国のEVバッテリー支配は偶然ではなく、
約20年にわたる政策・資源・人材の一体的戦略の成果である。

AI、EV、再エネ、そしてデータセンター——
これらのすべての基盤に“電池”がある。

電池を制する国が、次の時代の産業を制する。
その現実を、いま世界が再び学んでいる。


📚 参考・出典

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